第6回 〜福島の農家と農業を末永く応援したい〜 「福島の野菜を食べる会」 川村研治さん(代表)、藤田雄介さん 保坂幸尚さん、高橋盛男さん

facebookから始まった「ふくしま福野菜プロジェクト」。リーダーの川村さんと、デザイナーで白河市出身の藤田さん、保坂さ ん、高橋さんの4人からなるグループ。今回は、特別に本田よう一との対談形式でお伝えします!!

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左から、保坂さん、高橋さん、川村さん、藤田さん

本田)「福 島の野菜を食べる会」はどうような経緯で誕生したのですか。

高橋)  最初の呼びかけ人は僕です。福島第一原発の事故が起こって、福島産野菜の流通がストップしたとき、これは大変な風評被害になる と思って「福島の野菜を食べる会というのをつくりたい」と、facebookに書き込んだんです。そしたらよくあるように、facebook上でつながっ た「友達」が何人か「いいね!」と言ってくれました。でも、当初はとくにそれ以上の動きはありませんでした。

川村)  僕と高橋とは高校の同級生。卒業以来、めったに会うことはなかったのですが、facebookでつながりができて。保坂さんも そうだよね。

保坂)  そうそう。私は、高橋さんとは古い川仲間なんです。パソコン通信時代にやっていた「川のフォーラム」(川仲間のパソコン上の談 話室のようなものですが)それをfacebookで復活させようとしていたころ、震災と原発事故が起きたんです。

川村)  「福島の野菜を食べる会」の設立に同調はしたものの、最初は何をしたらいいか全然わからなくてね(苦笑)。呼びかけの3日後く らいだったかな、朝日新聞に須賀川の有機農家が自殺したという記事が載ったんです。3月下旬のことです。その記事を見て、これはじっとしていられないと。

高橋)  で、川村が「福島の野菜を食べる会」の設立をfacebookで宣言。「現地を見に行く」と言って福島に飛びました。 第1回の会議は4月8日で、福島県東京事務所に会の設立報告とヒアリングに行ったあと、都合のつくメンバー8名が集まってスタートしました。「ふくしま福 野菜プロジェクト」という名称が生まれたのもその会議だったね。福島の野菜だから「福野菜」。代表は、真っ先に行動を起こした川村にお願いすることになり ました。

 

~流通が滞っているなら、僕たちで野菜を仕入れて売ろう! ~ 

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川村)  会は発足したけれど、当時は福島県内もそうとうに混乱していたし、僕らも現地に行けばいいのか、こちらでできることがあるのか がわからない。しかし、何とかしなければという気持ちが皆にあって、野菜を食べることで福島の農家を支えられるのではないか、流通が滞っているなら僕たち で福島から野菜を仕入れてきて東京で売ろうという話になりました。 ところが、メンバーには農家も農業関係者も一人としていない(笑)。どこから野菜を手に入れればいいかさえわからない。そのとき、野菜仕入れのルートを拓 いてくれたのが藤田くんでした。

藤田)  僕は白河市出身で、まちづくり活動を通じて高橋さんを知り、「福島の野菜を食べる会」を知ったんです。これだけ思いのある人が 集まったのだから、何とかそれを具体化したいと思い、JA白河の方を直接訪ねました。 すると、その方が言うんです。「電話やFAXで支援の申し出はたくさんあるけれど、直接会いに来てくれたのはあなたたちが初めてだ」と。とても喜んでくれ て、野菜を分けてもらえることになったんです。

川村)  4月30日に青山で第1回の福野菜直売会を開いて、それから青山ファーマーズマーケット(国連大学前)を中心にして、だいたい 月1回のペースで12月まで直売会を開催していました。在京の福島県出身者や、福島と縁のある方々がボランティアスタッフとして参加してくれました。毎回 の野菜の完売は、そうしたスタッフの熱意の表れです。直売会のほかに、愛媛FCサポーターなどイベントで福島の野菜を売りたいという団体への仕入れ先の あっせんなどもしました。

保坂)  回数を重ねるうちにいろんな人が集まってきて、みんなが「こんなことしようよ」とどんどん提案が出てくる。藤田さんは、本業が デザイナーだから福野菜のロゴやのぼり旗などを福野菜のデザインしてもらったけれど、あれが団結力を生んだと思う。

本田)  僕は、第2回の直売会にお邪魔したところからですね、福野菜プロジェクトに参加させていただいたのは。

川村)  メンバーも多様です。都の職員に医者に大学教授、出版社の副社長、生協の方々、デザイナーにカメラマン、ライター、料理家。マ ンションディベロッパーの社長で、当時「被災地の仮設住宅に緑のカーテンを設置しよう」というプロジェクトを立ち上げた方もいます。 それぞれ自分が持っているスキルを生かして、何とか福島を応援したいと集まったんです。それがほかのいろいろなつながりを生み出してもいますね。福野菜を 通じて、本業でつながりができた人もいる。でも、なぜかみんなのスキルにないのが、野菜の直売(笑)。

高橋)  それがよかったと思う。よくわからないから勢いだけで始められた。下手にものがわかっていたら、最初のころにあきらめていたか もしれない。

 

~福島と「親戚づきあいのようなつながり」を持ちたい~

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本田)  一年が経って、今はどんな状況ですか。

川村)  直売のほうは、一年間経つうちに徐々に売り上げが出なくなってきました。支援熱が下がったという感触があります。福島の状況は 相変わらず厳しいんですが。

高橋) そ れもあって昨年7月から「福野菜応援パック」を始めたんです。メンバーに本田さんと同じ泉崎村の出身で、母親が野菜の直売所 をやっているという方がいて、直売所を訪ねたんです。そのときショックだったのは「地元の人が地元の野菜を買わなくなった」という話でした。直売所にも、 北海道産や茨城産の野菜が並んでいたんです。そんなこともあって、産地直売所「たんぽぽ」の協力を得て、送料込み2000円の野菜パックを宅配便で売るよ うになったんです。 本田さんに料理とレシピをつくってもらい、プロカメラマンの中川カンゴローさんに撮影してもらってつくった「福野菜レシピ」を毎回パックに入れています。 野菜もレシピも好評ですよ。数としてはたいしたことはないのですが、細々とでも続けていくことが大事だと思っています。

保坂)  そうしているうちに、また何か生まれてくるはずだよね。

川村)  ファーマーズマーケットを通して、二本松農園さんと知り合いになったのをはじめ、産地・生産者とのつながりはいくつかありま す。現地が今、何に困っているのか、その声を改めて聞きたいですね。私たちにできることがあるとしたら、何をすれば一番喜んでもらえるのか。

高橋)  僕自身は、都会に住む僕らと福島の人たちが「親戚づき合いのようなつながり」をもてたらいいなと思っているんです。何か要望が あったときに「よっしゃ!」と言って、すぐに手を貸せるような関係。

川村)  僕たちの活動に限らず、いろんな面で福島への支援活動が頭打ちになってきている感じがするんですよ、一年経って。 僕たちの場合だと、農家さんが具体的にこういう手助けをしてほしいと手を挙げてくれたら、もっとできることが具体的に見えてくるかもしれない。たとえば、 こんなイベントをやりたいということであれば、プランニングとか、広報ツールのデザインとか、そういう面ではお手伝いできることがいろいろ考えられると思 う。 少し風呂敷を広げると、こういうつながりを通して新しいビジネスが生まれるような環境ができてくるといいなと思っています。

高橋)  昨年9月、藤田さんが企画した「Green Drinks Shirakawa」でUst白河のメンバーと出会ったときも、そういう話にもなりました。福島との連携を考えている在京の団体のなかからも同じような声 が聞こえてきたりしますね。

保坂)都 会と地方のそういう人同士を、どんどん引き合わせていきたいね。そこで会話が生まれ、一緒にごはんを食べて時間を共有して、 もっと深く知り合って、親戚づきあいにもっていく(笑)。

本田)  「ふくごはん」でおつきあいのできた方にも、野菜づくりに熱心で、楽しい農家さんがたくさんいらっしゃいますから、ぜひ一度顔 を合わせていただきたいとは僕も思います。

高橋)  そういうつながりをつくっていくのは大歓迎。「福野菜」と「ふくごはん」で何かしらつながりの場をもちましょうか。さあ、みん なで企画を考えよう。また集まって飲まなきゃ(笑)。

本田)  で は、企画は乞うご期待!!!ということで。お話、ありがとうございました。

 

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<ふくしま福野菜プロジェクトの詳細について>
本 田よう一×福野 菜レシピブログ

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