第25回 〜自然から愛される、持続可能な農業を目指して〜会津耕人会たべらんしょ(喜多方市)
第25回〜自然から愛される、持続可能な農業を目指して〜
会津耕人会たべらんしょ(喜多方市)
日本百名山のひとつ、飯豊山のふもとに位置する、喜多方市山都町(やまとまち)。万年雪の飯豊山は季節ごとにその残雪の形を変え、古 く から、ふもと で暮らす農家の人々は、その雪の形をたよりに農作物の種のまき時を判断してきました。いまもなお、そこには、恵あふれる自然とともに生きる、山都町ならで はの農の営みがあります。
Q. 「会津耕人会たべらんしょ」とはいったいどんな団体ですか?
A. 「会津耕人会たべらんしょ」は、2008年に喜多方市山都町の農家5軒が集まって作った団体です。山都町は昔から有機栽培の盛んな地域で、メンバーの多く は、この地に魅せられて山都町に移住し、新たに農業を始めたIターン者。Iターン就農者は山都町の自然に魅せられた人間ばかりですから、誰もが「環境を守 りたい」「里山の暮らしを取り戻したい」という想いを持っています。ただ、小量多品種という小規模の農家が多く、自力で販路を開拓するのが難しいのが現状 で、最低限、経済的に各農家が自立することが課題でした。
そこで、とにかく何かやってみよう。個人が難しいのであれば集まればいい。興味のある人はたくさんいるはずだ―――。そんな想いから、Iターン就農者を中 心に地元の農家も参加して、都市向けの野菜を共同で出荷できる団体を作りました。それが「会津耕人会たべらんしょ」の始まりです。いまでは、新たに農業を 始めたいと思う若者を応援する新規就農者のサポートや勉強会・交流会も開催しています。
Q. 美味しいネギをつくるための皆さんなりの“工夫”や“ひけつ”はありますか?
A. 除草を兼ねて土寄せをしっかり行い、自家製有機肥料で土作りしています。土寄せとは、ねぎの根元に土をかぶせる作業のことで、こうすることでネギの成長が 促され白い部分を長くすることが出来るんです。
うちで作っている“会津地ねぎ”は会津伝統野菜の1つで、種から自分たちで作る自主採種です。別の場所から購入した種で栽培しているわけではなく、長い年 月をかけてこの地で自主採種(“種取り”とも言います)を続けてきているため、ネギ自体が土地の風土に順応している。だから、大きな病虫や害虫の被害も無 く、無農薬でもしっかり育つ。食べる人も作る人も安心できるネギなんです。
Q. 皆さんにとって、野菜作りとは毎日の中でどんな存在ですか?
A. “楽しみ”。他の農家との交流や消費者との交流も楽しみの1つ。それに、有機農業はやればやるほどその奥深さにはまります。自分で食べ物を作ることの安心 感は、何にもかえられません。
Q. おすすめの食べ方があれば是非教えて下さい。
A. 私たちが作っているネギは、とにかく柔らかさと甘みが特徴。ぜひ、ネギが主役の料理で味わってほしい。3センチくらいのぶつ切りにして、天ぷらや串焼き、 バター炒め。しっかり火を通して、とろみと甘みを出すとより美味しいですよ。
Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?
A. こんなに農業に向いている県はない。様々な作物が生産出来て、しかも美味しい。食生活が非常に豊かな土地です。
その豊かな福島の食生活が、原発事故によって滅茶苦茶にされてしまった。実害が少ないといわれる会津地方でも、山の恵みは出荷停止に。福島の食に対して自 信を持てなくなってしまったところがありました。
今はとにかく一軒一軒の農家が栽培技術を向上させて、しっかりとおいしい野菜を届け続ける。その継続のなかで繋がりや信頼が生まれれば、福島の食に対する 理解が得られるはずです。そのなかで自信も取り戻していきたいんです。
Q. 「ふくごはん」プロジェクトは、震災と原発事故をきっかけに、改めて福島の食の魅力を多くの伝えたいと始まりました。皆さんの活動には、震災や原発事故の 前後で、どんな変化がありましたか?
A. 放射能の問題によって、真面目に有機栽培に取り組んでいた農家ほど困難に直面しました。落ち葉や草、わらなど、自然の恵みを使って土 作りをす るのが有機農業です。そこに放射能が降り注いだかもしれないというなかで、その無力感や理不尽さからくる失望は大きなものがありました。震災直後は、とに かく作物の検査をして数値を明らかにしていこうということで、かなりの手間と費用を費やしました。毎日毎日、心配ばかりでした。
今では、この地域は放射能のリスクが少ないと数値でもハッキリ分かっていますし、現状の検査体制の中で、安心感のある食べ物を届けたいと思っています。
Q. 震災後、特に思い出深い出来事はありますか?
A. 強かったのは、「会津耕人会たべらんしょ」に仲間がいたことです。危機に直面した時、皆で励ましあって結束力を強め、前に進むことが出来ました。
それから、理解ある消費者の方々との繋がりも出来て、結果として震災前よりも販路が増えています。以前から私たちの野菜を取り扱って頂いていた有機宅配の 会社は、震災直後からとても理解があって、放射能問題にも向き合ってくれました。社内に検査体制を整えて、私たちの出荷をサポートしてくれたり、販売促進 もしてくれたりしたんです。その結果、震災前よりも出荷数が増えたほどでした。また、私たちが開いている直売所『百姓市』では検査結果を全て公表する形で 販売していました。結果として全ての検査で検出限界を下回り、線量の高い地域からのお客さまが増えて、新たな交流が生まれたんです。
Q. 一言メッセ―ジをお願いします!
A. 飯豊山の大自然、温泉、蕎麦、そして有機野菜!! ここ山都はいいとこだがら、いっぺん来てみらんしょ~。
● 会津耕人会たべらんしょで育て る野菜たち
春
・リー フレタス ・ニンジン ・くきたち菜 ・きぬさや
・ブロッコリー ・キャベツ
夏
・トマト ・ピーマン ・ナス ・会津丸ナス ・庄 衛門インゲン
・ズッキーニ ・キュウリ ・白黄うり ・トウモロコシ ・ジャガイモ
・カボチャ ・オクラ
秋
・会津地ねぎ ・里芋 ・サツマイモ ・カブ ・小 松菜
冬
・大根 ・白菜 ・人参 (雪ノ下)
※2013年12月の食材「だいこん」も、会津耕人会たべらんしょの大根を使用しています。
<「会津耕 人会たべらんしょ」の野菜を購入できる場所 >
夏:直売所 『百姓市』
場所:喜多方市山都町相川(相川郵便局から100m)
営 業時間:6月下旬~10月上旬
毎週日曜 11:00~16:00
冬: 冬季は店頭での販売が無いので、直接ご連絡ください
(連絡先 0241-38-2257)