第18回〜「ふくしまの食」は、これからの希望のワードだ〜 やますけ農園 山口英則さん (会津坂下町)

地元・会津坂下町で出来たお米を餌に食べ、広大な自然のなかで、のびのびと暮らすニワトリたち。そんな彼らを愛情持って「ぴよたち」 と呼ぶ、やますけ農園の山口英則さん。養鶏の仕事はまるで「学校のよう」と楽しそうに語るその瞳は、まるで子どもの頃のような、毎日への好奇心に満ちてい ました。それほどまでに心惹きつけられる養鶏の魅力とは? そして美味しさの秘密はどこにあるのか? インタビューで伺ってきました。

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Q. 山口さんが養鶏を始めたのはいつですか。また、きっかけは何でしたか?

A.  2007年の年末に、養鶏を始めました。それまでは14年間、ファスナーメーカーの技術者で、海外工場に技術指導するのが主な仕事で した。海外勤務ということもあって、週末でも出張で飛び回ることがあり、もう少し娘や家族とゆっくり過ごせたらなという願望から地元の会津坂下町に帰郷し たんです。
たまごを選んだのは、帰国前に住んでいたヨーロッパの食を通して、“安全で、美味しいたまご”の大切さを痛感したからです。
ヨーロッパの鶏は平飼いでのびのびと育つのが主流です。日本の様な狭いケージ飼いは法律が認めていない国もあるくらい、動物の命への理解や食の生産現場へ の意識 が高いのです。スーパーやマルシェでの陳列もドカンとバラでてんこ盛り。買う人が好きな形、大きさ、色を選んで、好きな量だけ買っていくんです。梱包や 選別にはコストをかけず、食べ物にお金を使っています。日本は逆に見た目ばかり気にして、包装材などにお金を払っているようなもんですね。
帰国後はまず土地探しから始めました。鶏舎も自力で建てて、ようやく2008年の11月に最初の雛を導入することができました。初めて生まれたたまごは 2009年の3月でした。帰国してから、1年以上が経っていましたね。

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Q. 美味しいたまごを作るための、山口さんなりの“工夫“や“ひけつ”は何かありますか?

A. 私はたとえば家畜であっても、一生幸せに暮らす権利を守るというアニマルウェルフェア(動物福祉)を推進しています。
日本ではいまだに浸透していませんが、ぴよ達が毎日快適に生活できるように、安全なえさと快適な居住空間を保つのが私の仕事だと思っています。鶏舎はなる べく自然とのふれあいができる構造にして、適度な日光やそよ風をとりいれています。
床は悪臭を低らすための工夫を凝らしました。 鶏達が生活している地面(床)に大量の草を入れ、糞と混ざると、自然に発酵するようにしてあります。こうすることで鶏の糞が分解されて、悪臭が減るんで す。 発酵を促す為に新鮮な空気を入れ、快適な空間を保つように心がけています。 また、餌は出来合いの配合飼料ではなく、単味飼料の自家配合。鶏達の成長や体調によって最適なレシピで配合を調整しています。もちろん、使用している素材 は安全性を確認して、抗生物質や着色剤などは一切使用していません。自家配合のメインはお米で、これも地元会津坂下町の契約農家さんに指定の田んぼで栽培 して頂く飼料米を使っているんです。会津の美味しいお米が育んでくれるからこそ、やさしいたまごが出来上がるんですよ。

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Q. 山口さんにとって、養鶏とは、毎日のなかでどんな存在ですか?

A.  学校の様な存在です。毎日必ず決まった時間に登校し、必須科目は必ず受けなければなりません。残って自主学習も可能で、費やした努力は自分の力になってい きます。自然(鶏、野性動物、植物、気候など)が私の先生の様なもので、生態系の仕組みや植物の存在意義など養鶏を通じて考えさせられることは多く、毎 日、たくさんのことを教えられています。食の大切さや命の尊さを直接肌で感じながらの仕事なので、人生の基本が1から10まで詰まった教本のようです。

Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?

A.  お米、野菜、果物。昔からどれをとっても「おいしい」イメージがあります。会津のコシヒカリや福島市のモモ、そのほか山菜なども日本一と思えるものが数多 く存在します。気候や土壌に恵まれていて、農作物には最適な環境が整っているからだと思います。ただ、3.11以降、「ふくしまの食」という言葉は2つ目 の意味を持ってしまいました。ぐっと構えてしまう、少し考えてしまう、残念で悔しい感覚を覚えてしまうのも事実です。でも、最近では、頑張ってるな!とい うイメージが先行してきました。「ふくしまの食」は、これからは希望のワードでしょう!

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Q. 「ふくごはん」プロジェクトは、震災と原発事故をきっかけに、改めて福島の食の魅力を伝えたいと始まりました。山口さんの毎日の生活や、特に農業に関わる ことで、震災や原発事故のあと、大きな変化はありましたか?

A.  幸い会津は大きな震災被害もなく、放射線量もかなり低いレベルのため、私自身は大きな変化はありません。ただ、時間差で押し寄せた風 評被害はかなり顕著で、インターネットでの販売は激減してしまいました。正しい情報をどのように伝えればお客様に届くのか? 原発事故により、販売方法や 情報発信の仕方について、これまで以上に常に念頭に置くようになりました。

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Q. 震災後、特に思い出深い出来事はありますか?

A.  メールや手紙でいろんな方から励ましのお言葉をたくさんいただきました。特に関西の阪神大震災を経験された方からの応援は心強く、食料なども送ってくださ いま した。地元のお客さんからは、貴重な燃料を分けていただき、配達のために必要なガソリンを調達することができました。一生忘れない御恩です。
また少し話は変りますが、震災の数日前、うちの畑のねずみ達が一斉にいなくなりました。今思えば自然界の生き物は第六感で感じていたのかもしれません。

Q. たまごを食べてくれる人たちへの、一言をお願い致します!

A. 当たり前のことを当たり前にする。それだけで、こんなに美味しいたまごが出来上がるんです。特に、たまごが高級だったころの味をご存じの方は頷いて いただけるでしょう。昔ながらの、たまご本来の味をお楽しみください!

 

購入できる場所、食べることの出来る場所

<たまごの販売場所>
・やますけ農園
福島県河沼郡会津坂下町長井字東竃4583-56
080-1694-4132(事前にご連絡ください)
http://yamasukenouen.com/
・万事屋じみぃ
福島県河沼郡会津坂下町市中2番甲3638
営業時間10:30-18:30 火曜定休 0242-85-7178
http://gimy-select.com/ 

<たまごを食べられる飲食店>
・日本酒宿 七色
東京都足立区千住1-27-1 沢田ビル202
03-3888-0776
・小判寿司
福島県東白川郡棚倉町大字棚倉字古町30-2
0247-33-7337
・リストランテ パパカルド
福島県会津若松市七日町2-39
0242-93-7887