第15回 〜「一魚一会」。 これからの福島は、漁業に大きなチャンスがあると信じる 〜 有限会社カナリシーフーズ ウロコジュウ 金成 勝弘さん (水産加工業者 いわき市出身)

福島県いわき市は、実は日々おいしい魚が水揚げされていた立派な港、漁業の街でもある。そうしたいわきのおいしい海の幸を地元はもと より全国の人々にも知って貰おうと取り組んでいる人がいる。地元で、魚加工販売店の「ウロコジュウ」を経営されている金成勝弘さんにお話をお伺いしまし た。

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Q. 今回のテーマ食材でもある「さんまのみりん干し」。金成さんのところでは、作り始めてどのくらいになるんでしょうか?
A. 本格的には、5~6年くらいかな。オレの地元は小名浜で、その地域では、ちっちゃい頃から、さんまのみりん干しをよく食べてたんだ。各家庭でも作っていた し、販売としてもピークで60軒くらいの会社がやってたくらいだから。とはいえ、家で食べるのは、商品にならないような小さいサイズのものばかりで、正直 あんまりおいしくないなぁと思ってたんだけどさ笑。それで、自分たちで作るようになったんだ。

Q. さんまのみりん干しはどう作られるんですか?
A. さんまを開いて、干して、しょうゆ、みりん、砂糖で味付けし、もう一度、干したもので、この辺じゃ、ごまがまぶしてあるものです。戦後に銚子の方から来た 漁師が、いわしでみりん干しを作っていたのがルーツなんだけど、いわきにはいわしがなくて、でもさんまはいっぱい捕れたから、さんまでやってみたってのが いわきでの始まりだよ。

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Q. 美味しいさんまのみりん干しを作るための “工夫“や“秘訣”は
ありますか?
A. うちの商品の秘訣は、黒糖を使っているところと、さんまは30cmくらいの大きいサイズを使うところ。脂がのっててうまいんだよね。本当は、もう少し小さ いサイズの方が腹骨とか薄くて料理は簡単なんだけど、やっぱり、おいしさには勝てないよ。今晩は「さんまのみりん干しだよ。」って言われて、ドンとメイン を張れるようなヤツにしたいよね!

Q. さんまのみりん干しのおすすめの食べ方を教えて下さい。


A. 焼いて食うのが一番だよ。ほかには、そうだな、そうめんに焼いたみりん干しを入れて煮るのもうまいなぁ。ほかの店では天ぷらにしたりもするよね。

Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?
A. オレは漁業やってるけど、福島と言えば農業の方が盛んなイメージ。まだまだ漁業の世界は保守的なところも多いし、漁業組合でイベントをしようと動い ていこうとしても、なかなか前に進まなかったりしてな。でもこれから、福島の漁業はできることが多いはずって、イメージはあるんだ。福島には農業や畜産、 果物もたくさんあるんだから、それらと魚を組み合わせれば、もっともっと、いろんな特産品ができると思うわけ。ふくごはんとも何か出来るといいなぁ (笑)。それこそ、花泉の酒粕で魚を粕漬けにするとか・・・。福島の東西でコラボして本田くんに監修してもらうってのもいいなあ。

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Q. 「ふくごはん」プロジェクトは、震災と原発事故をきっかけに、改めて福島の食の魅力を伝えたいと始まりました。毎日の生活や、特に加工品作りに関わること で、震災や原発事故のあと、大きな変化はありましたか?
A. 親父が家業でかまぼこを作っていたんだけれども、震災後に工場が全壊したため辞めてしまったんだ。元々、親父の仕事を継ぐつもりで、大学を出てから、漁業 関係の仕事についていたんだけど、その仕事で全国を歩いて、魚の扱いを勉強して営業もやって。3年だけ勤める予定が6年もやっててさ。親父に「いい加減 帰ってこい」って言われて(苦笑)2002年にいわき市に戻ってきたんだ。でもその後しばらくは会社員時代のノウハウを活かして電話一本ですませるような 仕事の仕方をしていて、パチンコやゴルフ三昧。こればっかだと腐ってくるような感じがしててさ。でも、それじゃ子供に背中みせんらんねーなって思ってね、 しっかりやることにしたんだ。

Q.震災後、漁業に関して思い深い出来事はありますか?
A. 一番は、このウロコジュウを立ち上げたこと。俺が腐ってきたころに近くの港に行ったらさ、ばあちゃんとかじっちゃんがさ、すごく安い値段で魚と加工品を 売っていてさ、これって、このまま放って置いたらいつかなくなっちゃうよな。って思ったんだ。そこから、市場のまな板が乗るくらいの小さなスペースで魚を さばき始めたんだよね。最初はいろいろ大変だったけど、店を始めたことで、お客さんとのふれあいとかも増えた。全国で震災関連の販売会が開かれればそれに 参加させてもらったりして・・・。ホント現場で得るものは多かったな。いわきでも朝市を仲間たちとやったりしてる。このままじゃまずいなって感覚は常々感 じるな。

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Q. 金成さんにとって、魚を売ることは、毎日のなかで
 どんな存在ですか?
A. 一魚一会。オレたちにとってはメヒカリ(※いわきの名産の小魚)は、一日何キロとさばくけど、お客さんの口に届くのは、ほんの数匹。その数匹に ウロコが残ってちゃ台無しだべ。一匹の魚にお客さんの笑顔を思い描いて丁寧に仕事をしていくこと。980円のジャンパーに4000円で刺繍してするくらい の意気込みだな(笑)

Q. さいごに、さんまのみりん干しを食べてくれる人たちへの、
一言をお願いします!
A. いわきにはハワイアンズ、ら・ら・ミュウ、アクアマリン福島と観光を目的に来る人が多いので、うちは土産物ってことなんだよね。もちろん、地元の 方々もいらっしゃるけどもね。 だからお客さんは、うちで買って誰かにあげることを想像しながら買っていくわけさ。そこにどう寄り添って商品を作っていくか、そして、その商品をより一 番、喜んでもらえるように販売していくか。間違いなくうまかったと言ってもらえるように。これからも、“までに”がんばります!(※「までに」は「丁寧 に」という意味の方言です)

 

 

購入できるところ

http://www.gurutto-iwaki.com/detail/index_408.html