第21回 〜虹色のトマトが、福島と消費者との架け橋に〜 虹トマト農家 須藤満さん (福島市)

「虹」と聞いて、あなたは何を思い出しますか?  赤にオレンジ、イエローにグリーン・・・。一度に見せるその7色のあざやかさ?  それとも、大きな空をまたいで、向こう岸とこちら岸とをつなぐ橋のような、あの凛々しい姿? 今回は、そのどちらもの意味を持つ特別な「虹」が、福島市の農家、須藤さんの元にあると聞いて、伺ってきました。

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Q. 「虹トマト」とはいったいどんなトマトなんですか? 普通のトマトとは何が違うんですか?

A.  「虹トマト」は、実は、1つの品種の名前ではありません。うちでは、水耕栽培でミニトマトを作っています。5種類のミニトマトをミッ クスして皆さんのもとにお届けしている、それが「虹トマト」という商品なんです。
色がカラフルでかわいいだけじゃなく、トマトの色によって栄養成分なども違うので、1つのパックで様々な味が楽しめるところが魅力です。
例えば、赤色はリコピンが豊富な「小鈴」、黄色はさっぱりした甘さの「イエローミミ」、ピンクはりんごのような香りがする「キャロルロゼ」、オレンジはカ ロチンが豊富な「ピッコロカナリア」、紫はアントシアニンが豊富な「トスカーナバイオレット」……といった具合です。
まだまだ、たくさんの種類のトマトがあるんですよ。

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Q. 可愛らしいネーミングは、どういう意味なんでしょうか?

A. 「虹トマト」という名前は、僕が自分で付けました。
実は娘の名前が「虹花(にじか)」というんですよ(照)。
パックに色とりどりのミニトマトが詰まった様子は、まるで7色の虹のようにカラフルだし、それからこの虹トマトが、福島と消費者の架け橋になって欲しいと いう想いも込めています。

Q. 須藤さんがトマト作りを始めたのはいつですか。また、きっかけは何でしたか?

A.  今から9年前の9月です、平成16年ですね。そのころに父が癌で亡くなったんですが、若い頃から父にはたくさん迷惑をかけてきたので、農家を継ぐことで親 孝行ができるなら、やってみようと思ったんです。もちろん、やるからにはとことんやろうという覚悟で始めました。

Q. 美味しいトマトをつくるための須藤さんなりの“工夫”や“ひけつ”はありますか?

A.  人の体と同じような考え方で栽培しています。
おなかが減るタイミングでごはんをあげたり、調子が悪くなれば、医者に診せて、注意深く見守る。以前は農薬に頼って栽培していたんですが、それは何か間 違っているなと思って変えたんです。
土耕栽培で農薬を使うことと、水耕栽培で肥料を含んだ水を与えることがどう違うのか、という点が一見矛盾してみえるかもしれませんが(笑)、簡単に言う と、ただ外から栄養を与えるのではなくて、体の内側からいいものを与えてじっくり育てていくって感じでしょうか。
手間暇はかかりますけど、水耕栽培だからこその良さやおいしさがあると思いますし、僕なりのトマトへの愛情の込め方ですね。

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Q. 「虹トマト」への熱意・思い入れを聞かせてください。

A.  「虹トマト」は今でこそ売れるようになりましたが、これは周りの人たちが、売れない時期があっても我慢してコツコツとうちの虹トマト を扱ってくれたり、話題にしてくれたりしたおかげです。それがなければとっくに終わってました。
売る物があることが大前提ですが、信用や人のつながり、感謝の気持ちがなければ、虹トマトは出来なかったですね。周りの人たちとのつながりが、私を成長させ てくれたのかなと思います。とても感謝しています。

Q. 須藤さんにとって農業とは毎日の中でどんな存在ですか?

A.  空気みたいなものです、毎日の中で、なくてはならないもの。
同じ農業とはいっても、親父とは違うトマト栽培を始めたので、初期投資でかかった借金を払い終えるまで大変さは続きますが、それが終わればとても楽になる のでそれまで頑張ります。それに1人で収穫などの作業していると、いろんなアイデア、ネーミングが次々と浮かんでくるんです。
虹トマトは実は、農業を始める前に料理人として働いていた時に「いろんな彩りの野菜があればいいなぁ」と思いついたものだし、まだ発売前なので内緒です が、次の新しい商品も考えてあるんですよ。

Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?

A. 以前は、国内有数の首都圏の台所、四季を通じておいしいものがいっぱいというのが頭に浮かびましたが、現在は苦労? というかネガティブワードしか思 い浮かびません。その中でも、僕ができることを、僕の周りの方々と刺激し合って、進んでいければと思っています。

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Q. 須藤さんの毎日の生活や特に農業に関わることで、震災や原発事故のあと大きな 変化はありましたか?

A. 震災後は、本業以外のことでも忙しい日々が続きました。
県北の一部の農家で原発被害者の会を作って東京電力に謝罪を求めたり、仲間の農家から集めた署名を持って県庁や国会に足を運び、原発事故や補償に関する質 問状を提出したりしていたんです。
でもそろそろ、私たち農家もいつまでも人任せにしないで、自分たち自身で何かをしないとまずい時期に来ていると思っています。「賠償金をもらうから良いん だ」とか「東電が悪い」とか、そんな事いつまで言ってたってしょうがないと思うんです。
まだ詳しくお話できる段階にありませんが、そういう考えから今、仲間たちと何か行動しようってことで話し合いも始まっています。

Q. トマトを食べてくれる人たちへ一言メッセージをお願いします!

A. うちの虹トマトをお買い上げ頂いている皆さんにはとても感謝しています。これからも皆さんに喜んでいただけるような新しくてユーモアのある商品を 作っていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。今までの物を大切にしつつも、それにこだわらず新しい物に挑戦し続けたいと思っていま す。

本田よう一が虹トマトを使った料理デモをオレンジページ主催「レシピでつなごう 全国の農家からいただきます!」で行いました。

その様子はこちらから⇒オレンジページ

 

購入できる場所、食べることの出来る場所

・ いちい イオン
・  コープ福島会津
・   二本松農園
・   Oisix(オイシックス)→ http://www.oisix.com