今回は、前回のこのコーナーでお話を伺った県庁の鈴木さんからのご紹介を受け、須賀川市長沼地区のナス農家、小林一郎さんにお話を 伺ってきました。若手の農家さんとはまた違ったオーラに溢れ、とてもエネルギッシュで、語る言葉１つ１つに重みを感じさせる小林さん。農家として、経営者 として、そして人生の先輩として・・・福島で活躍する若手の農家さんにも聞いてもらいたいお話です！

Q. ナスを作って何年目になりますか？
A. オレは、中学を出てから、もう５０年農家をやっているんだ。元々はきゅうり農家だったんだが２０年前からナス農家になった。ナスだけではなくて、冬から春 にかけてはニラ、秋には米、そして、この時期にはナスを作っているよ

Q. おいしいナス作りのためにどのような工夫をされてますか？
A． そーだなぃ。そう聞かれってちまうと意外と難しいな・・・。作物が成長するときには、積算温度ってのがあって、それが１００℃になると、成長するんだ。野 菜が育つ力を手伝うような感じだな。土作りもそうだべ。成長が早くなってくると、花も１つの枝から２つ咲く。栄養が分散してしまうので、１つを摘んで、よ りおいしいナスにしてるんだよ。手間っちゃ手間だけど、やっぱ、うまいナスにしたいべな。

Q. どんなナスを作っているのですか？
A． 今は、「黒ベエ」という品種のナスを作っているよ。もう、１５年くらいになるかな。ナスは、長ナス、米ナス、水ナスなどとタイプも品種もいっぱいあるん だ。最初は、「千両ナス」って品種を作っていたんだけど、種苗屋と相談して、今は「黒ベエ」になったな。ナスは見ての通り、下にいくと大きくなるべ？これ が、出荷のときに一度に梱包しにくくなるんだな。一日にうちは、１５０キロ出荷してるとここの時間の浪費がもったいない。最盛期には、１日朝夕２回の収穫 となると、結構な時間になっちまうんだ。黒ベエは割と、すっきり長細いから、そこがスムーズなんだよ。

Q. ナスのおいしい食べ方はありますか？
A． うちは、ナスは肉のはさみ揚げだな。肉にニラや香味野菜を入れて揚げるとうんめぇーよ。あとは、油炒めだな、サラダ油で炒めて、みそやしょうゆで味付けす るんだ。黒ベエはそうやって、食べるけど。黒ベエの他に水ナスとかもちょこっと作ってて、これはサラダや漬け物。生で食うとうめーよ。

Q. ふくしまの食についてどう思いますか？
A. なんでもあるなって印象だ。うちのナスもうめぇ、果物もうめぇ。でも、コレってのが、ねぇ。それは、行政や農協と連動しないとうまくできないことなんだけ ど。今、それがないってことは、組合長やったりして、若手の農家も育ててきたけど、なかなか難しかったな。

Q. 震災後、生活や農業をめぐる変化はありますか？
A. うちは、その当時は、ニラが出荷制限で完全に廃棄。土作りにかけた経費はもちろん、パアだべ。今年になって野菜に関しては、単価は半分くらいだな。今は、 うちは、だいぶ回復はしてきているけど、大きい規模で考えると先月のテーマ食材のきゅうりなんかは、最盛期に５０億の売り上げがあったけど、今は、半分に も届かないみたいだ。

Q. 震災について思い出深い出来事はありましたか？
A. 水もないし、野菜も出荷制限されて、食うものもない、ガソリンもない、電気も、ガスもだよ。祖母が体調を崩していて、それを看病する手だてもない。 十分に看病できずに、亡くしちまって・・・。うちの地区には、ダムがあって、それが決壊するくらいひどい地震でね。それを直すために、まだ、除染もままな らいとこもあるんだ。うちの周辺だけでも、３０棟くらいは全壊しちまった。うちも、家、蔵、駐車場。全部だめになっちまったな。今は、新しい家も建てれた し、今まで、ちゃんと農家頑張ってたからだな。

Q. 小林さんにとって農業とはどんな存在ですか？
A. 楽しいぞ。農家は。人には、負けたくねぇって思って作ってる。一人前になるには、１億は売り上げないとなんねぇよ。土や機材とかその辺いれると純売上は、 内緒だけどな（笑）量を卸さないと売上になんねぇから、大消費地に卸す。その卸す場所も工夫しねっきゃなんねぇべ。そこまでいくと、周りが勉強しに教わり にきたり、若手を育てたりもするしな。そうなんねぇといけねぇって思うよ。オレだって、やっと一人前になれたなって思ったのは、ここ数年の話だよ（笑）。

Q. ナスを食べてくださる方に一言！
A.ナスに毎日のように触れていると、ナスのにおいってのがあってそれを嫌いっていう人もいるけど、にんにくやしょうがを加えたり、して、いっぱい食べて ほしいなぁ。

＜ナスを購入できる場所＞

農協で卸しているので、ここで買えるというのはないそうです。
きっと、知らず知らずのうちに、小林さんのナスを頂いているのかなと思います。