第22回 〜地域と一緒に育つ白河高原清流豚へ〜 豚畜産家 秋元幸一さん (白河市)

常に自分に厳しく、妥協や甘えを許さない。人生に対しても養豚に対しても、そんな信念を貫く秋元さんのもとで育てられた白河高原清流 豚は、それこそ飼い主に似て、たくましく凛々しい姿をしていました。一口にして「美味い」と言わしめる、やさしい豚肉の味は一度食べたら忘れられません。

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Q. 秋元さんが豚肉を始めたのはいつですか。また、きっかけは何でしたか?

A.  もともと実家が肉の卸し問屋で、長男だった私は高校卒業後、18歳の時に上京して肉の研究開発の専門学校に通い始めました。それから ずっと豚肉に携わる仕事をしています。昭和61年から自分で牧場を借り、養豚を始めました。そして、交配や飼料を工夫するなど試行錯誤を繰り返し、平成 14年に「白河高原清流豚」という独自のブランドが完成しました。平成18年には特許庁から商標登録を頂いています。

Q. 「白河高原清流豚」は普通の豚肉とどう違うのですか?

A. 「白河高原清流豚」は、病気に強い健康な体質と、良く引き締まった肉質を持っています。また、肉本来の旨味がある赤身と、甘みがあるのに後味がさわやかな 脂が特徴です。
デュロック、ランドレース、ヨークシャーの3品種を独自に交配させて生まれた三元交配豚で、詳しくは企業秘密なので言えませんが(笑)、繁 殖能力や産肉性、肉質など、それぞれの品種の持つ長所をバランスよく引き出しています。
またその名の通り、白河高原清流豚を育てるには、この「白河」という静かな里山と、「清流」つまり地元の綺麗なわき水が欠かせません。豚は繊細な生き物な ので、静かな里山でストレスなく過ごしたり、おいしい水を飲むことが大事です。環境がそのまま豚の血となり肉となるんですよ。

Q. おすすめの食べ方はありますか?

A.  是非ソテーして塩のみで食べてみてください。肉本来の旨みや甘さが引き立ってとても美味しいです。それから、フルーツソースも合いますよ。白河高原清流豚 は豚臭さがないので、凝った味付けや調理をしなくても十分美味しく頂けます。

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Q. 美味しい豚肉をつくるための秋元さんなりの“工夫”や“ひけつ”はありますか?

A.  広々とした農園でのびのびと育てているところですね。国産豚肉は150日前後で出荷されることが多いですが、白河清流高原豚は180日間かけて丁寧に飼育 しています。量より質を大切にしたいと考えているからです。
また、飼料は抗生物質や合成抗菌剤などを使わず、すべて無添加です。育成後期の飼料には、豚の 特有の香りを低減させるためにビタミンE強化植物性タンパク質を与えていますが、これは自然由来のもので化学肥料などとは異なります。

Q. 「白河高原清流豚」への思い入れを聞かせてください。

A.  私にとって、豚は宝物です。だからこそ私は大切に育てたその宝物を、消費者の皆さんに直接お届けしたいと思っています。それに、専門 学校に行き始めた当初から、商品の規格(サイズや重さなどの基準)は何のためにあるのだろうと疑問だったんです。消費者にとって肉の味や品質は重要です が、規格はどちらかというと中間ユーザーである物流の利便性のためにあるような気がして、少し堅物なルールだと感じていました。日本全国に豚肉を流通させ るためには必要なことかもしれませんが、その世界で大手量販店と対等に戦うのは正直厳しいです。
私は量より質を大事にして、直接取引を基本にしています。

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Q. 秋元さんにとって畜産とは毎日の中でどんな存在ですか?


A.  私は何よりも、消費者に届けるために豚肉作りを行っています。 常に緊張感を高めるために、豚の中でもよりおいしいものをAランク、おいしいものBランクに別け、精肉にしてから、さらにもう一度ランク付けをして、より おいしいものAランク、Bランクとしています。
白河清流高原豚としてお客さまにお届けるのは、Aランク中のAランクのものだけです。いつでも胸を張って届 けられるようにしたいですし、また自分自身にもいい緊張感になります。お客さんへのアンケートを通じて感想や意見を頂き、それを元にまた一から豚肉を作 る・・・いわば出荷が豚作りのスタートです。

Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?

A. 福島の食に対して、福島県民は「疎い」と思います。全国1位の生産量を誇るものも、全国で最も早く採れ出すものもありませんが、味は本当にトップク ラスなんですよ。でも県民がそれに甘えている感じがする。学ぶ姿勢が足りない気がするんです。だからこそ、私自身は常に自分に厳しく、いつだって「もっと もっと勉強出来る」と考えているし、その姿勢を崩さず、常においしい肉を追求し続けたいと思っています。

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Q. 秋元さんの毎日の生活や特に農業に関わることで、震災や原発事故のあと大きな 変化はありましたか?

A. 消費者の皆さんから、応援メッセージをたくさん頂きました。流通が復活した時にはたくさんのオーダーもあって、涙が出るくらい嬉しかったです。一方 で風評被害は大きく、違う涙もありました。 でも、震災から1年、2年と経つうちに、地元の商工会青年部のメンバーと「清流豚やきそば」を作ったりして地元を盛り上げようと取り組んでいます。次世代 にしっかりとバトンタッチにしていきながら、ふるさとを誇れるものにしておきたいと思っているんです。自分も親からそういう背中をみせて貰ってきたから ね。

Q. 豚肉を食べてくれる人たちへ一言メッセージをお願いします!

A. 私が思う“おいしい豚肉”を真摯に作り続けています。現状に甘えず、プレッシャーを自分にかけながら、地域においては人を育て、そして、地域や周り とともに自分も成長ながら、もっともっとおいしい豚肉を作り続けたいと思っています。ぜひ一度、味わってみてくださいね。