「立川ごんぼ」栽培 慶徳敬子さん(会津坂下町)
第31回 〜ここだけの「立川ごんぼ」、作り繋げたい 〜
「立川ごんぼ」栽培 慶徳敬子さん(会津坂下町)
アザミの葉と良く似た、大きくてギザギザした葉を持つ「立川ごんぼ」(ごぼう)。会津坂下町の立川地区で栽培されている会津伝統野菜の1つです。ことしで開催10周年を迎える「立川ごんぼフェスティバル」は、関 東からもお客さんが訪れるほどの人気っぷりです。いったい何が、普通のごぼうと違うのか? 生産者でもあり、農家レストランも経営する、慶徳敬子さんにお 話を伺ってきました。
Q. 「立川ごんぼ」って、ずばり、普通のごぼうと何が違うのでしょう?
A. 立川ごんぼの別名は、「アザミゴボウ」と言います。普通のごぼうは丸い葉をしていますが、立川ごんぼの葉はその名の通り、アザミの葉のようにギザギザ。そ れから、脇根と呼ばれる根のひげの部分が太くてしっかりしているのも特徴で、元気よく栄養を吸っている証なんですよ。
触感は、普通のごぼうと思って食べると「お?」と思うくらい柔らかく、そして香りも豊か。それから、ごぼうを料理する前には必ず水でさらしますけど、この 立川ごんぼの場合はアクが少ないので、その必要がないんです。
Q. 会津伝統野菜の1つでもありますよね。いつごろから作られていたんでしょうか?
A. はっきりとはしないんですが(笑)、昔からこの会津坂下町の立川地区だけで、毎年毎年、種を取り続け、そしてその種を使って翌年にまた栽培する。そういう 繰り返しのなかで守られてきた在来種なんです。
そもそもこの地域は、会津盆地を走る大川の流れが溜まって出来た沖積土という砂地で、ごぼうの栽培に適していました。人の背丈ほど土を掘っても石1つ出て こないし、水はけもいい。ごぼうが、下へ下へと根を伸ばしやすい土地なんです。
Q. 慶徳さんが「立川ごんぼ」の生産を始めたきっかけは何でしたか?
A. 嫁いだ先が立川地域だったので、自然と(笑)。夫の両親と休日農業をしたり、忙しい時期に農業をしたりして、今に至ります。このあたりでは昔から、どの家 庭でも自分たちで食べる分くらいは立川ごんぼを作っていました。今でも、集落内に56軒ほどあるうちの40軒くらいでは、多かれ少なかれ栽培を続けていますよ。
Q. 美味しい立川ごんぼを作るための、“工夫“や“ひけつ”は、なんでしょうか?
A. 農業は覚える、ということが無いと、おばさんが言っていました。天候に左右され、常に、工夫工夫の毎日です。
Q. うちの立川ごんぼは、他とは「ココが違う!」という点を教えてください。
A. この地で作り続けてきたアザミ葉種の立川ごんぼは、自分たちで種を取り、作りつなげてきたもの。この地の大切な、宝物です。
Q. どうやって食べるのがおススメですか?
A. 柔らかなごぼうで、肉ととっても相性が良いです。秋に収穫したごぼうを春先に乾燥させて作っているごぼう茶もあるんですが、そのティーバック の中身をそのまま炊き込みご飯にしたりしても美味しいんですよ。
それから少量生産ですが、炊き込みご飯の具の缶詰も作っています。ごぼうと人参と、油揚げだけで、あえてシンプルに。実は、嫁いだころに同居していた明治 生まれのおばあさんから、昔はこの3つが入った炊き込みご飯がごちそうだったんだよー、と話していたのを覚えていて、炊き込みご飯の具を作るなら、あえて シンプルにしようって思ったんです。
Q. 慶徳さんにとって、農業とは、毎日のなかでどんな存在ですか?
A. 畑に行って野菜を取り、食事の準備をする。
農業は、食のはじまり、です。
また、珍しい野菜を育てるのは、それ自体が楽しみだったりします。
Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?
A. 四季折々に豊かな食材があり、その地にしかできない宝物があります。
Q. 「ふくごはん」プロジェクトは、震災と原発事故をきっかけに、改めて福島の食の魅力を多くの伝えたいと始まりました。中島さんの毎日の生活や、特に営業等 に関わることで、震災や原発事故の前後で、どんな変化がありましたか?
A. 原発事故さえなければ、もっと山の豊かな食材を楽しめたのになあと、残念に思います。
でも一方で、原発事故のあとで、多くの人と、新たに知り合うきっかけが生まれました。県内や県外で、生産者の顔の見える販売が出来るようになってきたの も、新たな出会いがあってこそです。実は震災当時、わたしは病気のために入院していて、なかなか思うように動けなかったのですが、翌年以降24年、25 年、26年と、どんどん新しい交流が生まれ、嬉しく思っています。
Q. 最後に、立川ごんぼを食べてくれる人たち、このインタビューを読んで下さる皆さんへの一言をお願いします!
A. 昔からこの地で種を取り続け、繋いできた立川ごんぼは、香り豊かでやわらかく、うまみもしっかりしています。この宝物をこれからも、しっかりと繋い でいきたいと思います。
< 立川ごんぼを購入できる場所 >
- 生産量が少ないため、毎年11月にこの地区で開かれる「立川ごんぼ フェスティバル」の販売でほとんど売れてしまいます。良かったら合わせて、遊びに行ってみて下さい。
- 慶徳さんの経営する農家レストラン「けやき蔵」は、完全予約制です。ここでも、立川ごんぼなど地元の野菜を使った料理を味わうことが出来ます。
- 「けやき蔵」会津坂下町大字立川字金山153 電話0242-82-2387