きのこ栽培「小川きのこ園」 中島康雄さん(いわき市)
第30回〜自分たちが「美味しい」、と思うエリンギを届ける。 〜
きのこ栽培「小川きのこ園」中島康雄さん(いわき市)
コリコリとした触感がたまらない、エリンギのソテー。今でこそ家庭料理の常連になっているエリンギですが、必ずしも昔から、誰もが知 る食材だったわけではありません。その頃から「誰もやっていないからこそ、面白い」とエリンギ栽培を始めたという中島さんに、お話を伺ってきました!
Q. エリンギの生産を始めたきっかけは何でしたか?
A. 生産を始めたのは、今から16年前、自分がまだ45歳の時です。もともと不動産賃貸業をしていて、キノコ工場の建物をほかの人に貸していたんです。その方 が工場を閉めることになり新たな借り手を探したのですがなかなか見つからず、結局、自分でエリンギ栽培を始めることにしました。
ただ当時は、まだ世間的にエリンギの知名度が低く、生産方法も確立されていない時期。心配はありましたが、その反面「誰もやっていないからこそ、面白 い!」という気持ちが大きく、チャレンジすることにしたんです。
Q. 美味しいエリンギを作るための、“工夫“や“ひけつ”は、なんでしょうか?
A. 良い培地を作ることです。
それから、こまめに生育の様子を見て、手間と時間を惜しまないことです。
Q. うちのエリンギは、他とは「ココが違う!」という点を教えてください。
A. 私たちのエリンギは水分含有量が少なく、硬めの触感になっているのが特徴です。これは、「小川きのこ園」独自の培地作りがあってこそ出来るものなのです が、料理した時に目減りが少なく、日持ちがいいのが、うちのエリンギ特徴です。
Q. どうやって食べるのがおススメですか?
A. 水分が少ないので、唐揚げや天ぷらなどの揚げ物に向いています。また、固めなので、バターやオリーブオイルで炒めるとコリコリとした触感が楽しめるので、 おススメです。
HPではレシピも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
→小川きのこ園のHPより http://ogawakinoko.blog.fc2.com/blog-category-1.html
→お客様から教えて頂いたレシピ
http://togetter.com/li/536034
Q. 中島さんにとって、食とは、毎日のなかでどんな存在ですか?
A. 人が生きていくうえでの、食に関わる基本だと思います。自分たちのなかでは、ごく当たり前の仕事だと捉えています。
Q. 「ふくしまの食」と聞いて、どんなことが頭に浮かびますか?
A. 自分たちで作っているものは、生産過程はもちろん、放射能検査の状況もしっかり把握しています。そのため、本当に安心出来る生産品だ と胸を張って言えることが、良い点だと思います。
一方で、PR下手だと思います。モノ自体は良いのに、パッケージやネーミングがあか抜けないものが多いように感じます。もっとモノ=生産品の良さを生かせ る商品開発だとか、販路開拓やPRを確実に出来る人材の育成が、ますます必要になってくるのでは?と思います。
Q. 「ふくごはん」プロジェクトは、震災と原発事故をきっかけに、改めて福島の食の魅力を多くの伝えたいと始まりました。中島さんの毎日の生活や、特に営業等 に関わることで、震災や原発事故の前後で、どんな変化がありましたか?
A. 原発事故の直後、一時的に工場を閉鎖せざるを得なかったんですが、その数日間に育ったエリンギは出荷することが出来ず、大量に廃棄しなければいけな かったのが本当に辛かったです。またその後も、安全性が確認されているにも関わらず、多くの取引先から取引を停止され、悔しい思いをしました。
一方で、風評被害が続くなかでも、変わらずに注文して下さった取引先がありました。ツイッターなどで弊社の評判を知った方々が工場見学に来てPRして下 さったり、ネットでエリンギのレシピを紹介して下さったりと、多くの方々との、新しい交流が生まれました。 また、私自身のことでいえば、原発事故前はあまり目を向けることのなかった、県内や市内の生産品に素晴らしいものがたくさんあることに気が付きました。生 産品のほかにも、自然や文化、人間性など、今まで当たり前のように接していたものたちを、見直すようになりました。
Q. 最後に、エリンギを食べてくれる人たち、このインタビューを読んで下さる皆さんへの一言をお願いします!
A. 私たちは生産者として2つのことを基本にしています。
▼自分の子どもに食べさせられないものは出荷しない(安全)
▼自分たちが美味しいと思うきのこを皆様に届けたい(美味しい)
「安全」であることは大前提であり、原発事故前から農薬などに気を使い、培地の安全性にこだわってきました。原発事故後には工場内に放射能測定器を導入 し、毎日欠かさず、培地とエリンギの測定を現在も続けております。
自分たちが一消費者として「どんなきのこを食べたいか」という視点を常に持ち続けながら、自分たちが食べて美味しいと思えるきのこを作り続けたいと思って います。その理想のきのこを作るために今後も努力を続けてまいりますので、丹精込めて育てたきのこを多くの皆様にぜひ味わって頂きたいです。