「本醸造辛口」
今月の日本酒 「本醸造辛口」
脇坂) 早いものでもう年の瀬ですね。年末年始とお祝い事も多く、日本酒 の活躍の場も増えるこの時期。一方、酒蔵では新酒の初しぼりが始まっていたりと1年で最も活気溢れる時期です。 そんな今月のお酒は「本醸造辛口」。福島県内で「花泉」といえば「辛口」と必ず名前があがるお酒です。まずは本田くん、お味はどうでしたか?
本田) 僕、辛口すごく好きなんです。
口に入れたときは、僕の知っているいつもの花泉だけど、のどごしが全然違う。キリっと切れ味がいいですよね!!
脇坂) 7月に紹介した辛口一回火入れと同じお酒の、二回火入れバージョ ンです。たしか、その時も同じような感じを受けてませんでしたっけ?(笑)
本田) 確かに似ている。。一回火入れと二回火入れで随分と印象が違いま すね。今回の辛口の方が辛いような感じがします。どうしてなんですか?
脇坂) 「辛い」というのは実は、いろいろな要素によって、辛く「感じ る」ということなんです。例えばアルコールの高さ。アルコール度数が低いものより高いものの方が、より辛く感じます。他にも味の濃淡や温度など、さまざま な要素があります。また、日本酒の甘辛さを表す指標として「日本酒度」というものが使用されており、ラベルなどにも表示がありますが、これはあくまで目安 として見ていただければと思います。今回の本醸造辛口は、日本酒度数が「+9」と非常に高い辛口タイプですが、実際に飲むとそこまでの辛さは感じないと思 います。
本田) 花泉の造る酒のなかでは、本醸造辛口は日本酒度でいうと「辛口」 に含まれるんですか? 口あたりは柔らかいけど、シャープな余韻ですよね。
脇坂) 日本酒度でいうと、辛口タイプですね。ただ、仕込み水の甘さと四 段仕込みの旨味が、それほど辛くは感じさせないんだと思います。とはいっても、日本酒は糖で出来ているので、基本的には辛いわけがないと思いますけどね (笑) 日本酒度については、後述の「豆知識」を参照してください。 ところで本田くん、日本酒の甘・辛って、どうやって造り分けていると思います?
本田) おぉ、難しい質問だぁ。火入れと酵母が関係してくるのでしょう か?
脇坂) はずれ~(笑)まったく関係しないわけではないですけどね☆
お酒を造る過程では「もろみ」の状態での温度管理が一番重要なポイントです。「もろみ」の時に温度を高く推移させると、辛口に、ゆっくり低温で発酵させる と甘口にとなります。ここが、杜氏の腕の見せどころ!!というわけです。
因みにお米では、味は変わらないんですよ。お米の癖はあるんですけど、これが山田錦の味だとか五百万石の味だとかないので……。つまり日本酒は、材料より もむしろ、杜氏が直接管理する「造り」がすべてを左右する一番大事な所なわけです。
本田) 腕の見せどころ!って格好いいですねえ。
これぞ醍醐味。はずれちゃったのは悔しいですが、温度管理が一番重要とは……。簡単そうで奥深いですね。温度で味を造り分けれるなんて本当に日本酒は面白 いなぁ。
ところでこのお酒。シャープな味わいだから、ソーダで割ったり、秋から冬にかけてのフルーツを少し入れたりしてもおいしそうだなぁと思ってしまうのです が、そういったアレンジは、杜氏としてはアリなんですか?
脇坂) お酒は、飲み手のもの。美味しく楽しく飲んでもらえれば、僕らは 何がダメとか言う事はないですよ(笑) 昔は、この辛口が、うまく造れなかったらしく、幻の辛口という事でプレミアムがついて高い価格で販売されていたこ ともありました。もちろん、弊社で設定したわけではなく、小売店が勝手に高値をつけてしまっていたんです。でも、そうするとお客さんの手に届きにくくなっ てしまうので、今は一切それをやめていただき、正当な価格で販売して頂いています。
本田) そんな歴史があったんですね。今はみんなが楽しく、おいしく頂け るんですね。本当にありがたいです。今月は、年末ということで華やかなレシピをご紹介してます♪ 日本酒が大活躍するこの時期、美味しい手料理とともに、 美食のコラボを是非味わってみてください。
◎酒造り豆知識
「日本酒度」とは
日本酒の比重を表示するために設けられた 単位で、15℃のお酒に日本酒度計と呼ばれる特別の浮秤を浮かべて測定します。15℃で4℃の純粋の水と同じ重さのお酒(比重=1)は日本酒度 ±0で、それより軽いものはプラス(+)、重いものはマイナス(-)で表示します。一般的に甘口酒は含糖量が多く、比重が大きいの で(-) 側に傾き、逆に辛口酒は(+)側に傾きます。そのため、酸の多さによっても違いはありますが、一般的には(+)の度合いが高くなるほど辛口であり、(-) の度合いが高くなるほど甘口ということになります。
・麹米 喜多方産「五百万石」
・掛け米 南会津舘岩産「タカネミノリ」
・四段米 南会津産「ヒメノモチ」
・酵母 「協会701」
・アルコール度数 15度