「霧の華」(有賀酒造 白河市)

今月の日本酒 「霧の華」(有賀酒造 白河市)
「マッコリ」という名の日本酒」

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有賀醸造でマッコリを造り始めたのは今から20年以上前のことです。現社長で10代目蔵元の有賀義裕のもとへ、取引先の業者から「今韓国でマッコリがブー ムになっている。日本国内でマッコリを造ってみないか」と誘われたのがきっかけでした。義裕社長は偶然にもその2か月くらい前に、上野の裏の方にある店で マッコリを飲んでいて(おそらく一昔前まで飲めた密造マッコリ)、その美味しさや飲みやすさに感動し、日本酒の蔵元でもこんなお酒を造れないかと考えてい たそうです。
  そんな偶然が重なって始まったマッコリ造りへの挑戦でしたが、今のような味になったのは今から10年ほど前のこと。それまでは苦労 の連続だったそうです。
  社長に当時の話を聞くと「度数を8度くらいに押さえたかったが、度数が低くなるとどうしても味のバランスが崩れて良いものができな かった。その分、味を出すために米の精米歩合を変えたり、さまざまな酵母菌を試したりしたが、なかなかうまくいかなくて、とにかく試行錯誤の連続だった よ」と話してくれました。
  有賀醸造のマッコリは、米と米麹のみで造る純米酒です。こう説明すると皆さんからは「どぶろくとは違うのか」「何故マッコリという 名前にしたのか」と良く聞かれます。
  僕自身も気になっていたので一度理由を社長に聞いたことがあります。社長曰く「どぶろくはアルコール度数が10度以上あるイメージ が定着してるが、うちの商品は8度しかない。どぶろくとして売りだしても中途半端でインパクトが弱いんじゃないか」との答え。さらに言うと、実はどぶろく とマッコリは造り方からしてほぼ同じものなんです。両方とも米を使い自家醸造されたものですから。ただ、当時はマッコリなんて名前は誰も聞いたことがない し、飲んだこともない。日本酒も売れなくなってきた時代だから“どぶろく”として売るよりは“マッコリ”の方がおもしろいだろうってことで決めたそうで す。
  この「霧の華」は加熱殺菌をしていない生酒で、生きた酵母の呼吸が産み出す天然炭酸とスッキリとした酸味が特徴です。低アルコール ですし、必須アミノ酸や大量の酵母、それに乳酸菌を含んでいるため整腸作用も期待出来る。女性にやさしい商品だと思います。合う料理はやっぱり焼き肉。あ とはお好み焼きや馬刺しにジンギスカン、そして意外にもイタリア料理とも相性がいいんですよ。イタリア料理店にマッコリが置かれる日もそう遠くないかもし れませんね(笑)

  さて、酒コラムをこれまで3回にわたって書かせて頂きました。自分は酒造りに携わる側ですがこのコラムを書くことで、料理が酒を引き立たせ、そして酒が料 理を引き立たせるということを、再認識出来ました。 有賀醸造のモットーは「一粋酔(いきよい)」です。お酒を飲む方の一生の粋な酔いを提供することが第一の目標です。まずは美味しいお酒を造り出すことで、 僕らも目標にむかって“一粋酔よく”=“勢い良く”進んでいきたいと考えています。

有賀醸造 『虎マッコリ』の蔵元 常務兼杜氏 有賀裕二郎

・アルコール度数 9度
・容器容量 720ml 300ml

有賀醸造HP