「十口万」

今月の日本酒 「十口万」

sake_2012oct

本田) 脇さん、今回のお酒は「十ロ万(とろまん) ひやおろし」。前にコラムで出てきた「七ロ万」に名前が似てますね。

脇坂) そりゃシリーズですから!
口万シリーズは季節を追っていまし て、七口万は夏に飲んでもらう生貯蔵酒、十口万は秋に飲んでもらいたい「ひやおろし」になっています。

本田) これは失礼しました(笑)。
季節を追うお酒なんてステキですね。 ところで「ひやおろし」って言うのは、どんなお酒なんでしょうか?

脇坂) 「ひやおろし」の由来はその昔、冬にしぼられた新酒を劣化しない よう春先に火入れ(加熱殺菌)した上で大桶に貯蔵し、ひと夏を超して外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになった頃、2度目の加熱殺菌をしない(=この状 態を「冷や」といいます)のまま、大桶から樽に「卸(おろ)して」出荷したことから「冷卸(ひやおろし)」と呼ばれました。秋の酒として珍重されてきた歴 史があるんです。
そして現在も本質は昔と変わりません。暑い夏の間をひんやりとした蔵で眠ってすごして熟成を深め、秋の到来とともに目覚める〈ひやおろ し〉。豊穣の秋にふさわしい、穏やかで落ち着いた香り、滑らかな口あたり、濃密なとろみが魅力のお酒なんですよ。

本田) へ~。何だか秋のしっとりとして奥深さを感じる由来なんですね。 「ひやおろし」はそういう意味だったとは初めて知りました。「十ロ万」はゆったりと秋の夜長に楽しみたい感じですもんね。もしも夏の「七ロ万」が残ってい れば、飲み比べも楽しそう。 ところで「十ロ万」のとろみは、今月のテーマ野菜の小菊かぼちゃにもよく合いますよね。余韻が長いお酒ですね。どうやって飲むのがオススメですか?

脇坂) 秋の肌寒さには、常温やぬる燗も良いと思います。暖めると冷やし た状態よりも香りも立ちますし♪ 辛口一回火入れの回でもお話しさせていただきましたが、要冷=冷酒ではないので、お好きなように飲んでください。

本田) そうですね。すっかり涼しくなってきましたもんね。ぬる燗のいい 季節ですね。僕も楽しみたいと思います。

脇坂) お酒は、温度によってさまざな顔をみせます。気温や料理に合わせてお酒の温度を変える。日本酒の楽しみ方の一つですねー。いまは各家庭に当たり前に冷蔵庫 があって、酒蔵からお店屋さんに出荷するさいにも、冷蔵で宅配できるようになったりと、冷蔵技術環境が整った現代です。昔は簡単に飲むことのできなかった 生酒やひやおろしを楽しめる。日本酒の新しい魅力が広がったと感じています。

本田) 日本酒の長い歴史からみれば、今はホントいい時代なんですね。こ んなところにも日本のテクノロジーの恩恵が! ありがたやありがたや……。合わせる料理も、様々なお皿が生まれますよね。

脇坂) お、本田君の腕の見せ所ですか? 
ぜひ一緒にじっくり試したいものです(笑)。良い時代になったからこそ、お酒の管理もワインと同じように大事に扱って欲しいなと思っています。要冷蔵のお 酒だけではなく、二回火入れしたお酒も同じように。日本酒の敵は、温度と直射日光ですから。

本田) 温度と日光、ホント、そうですよね。その管理が行き届いてこその おいしい日本酒にありつける。それをいろんな酒器や飲み方で楽しんでもらえるといいですね!

・麹米 ・掛け米 非公開
・四段米  南会津産「ヒメノモチ」
・酵母   福島県開発酵母 「うつくしま夢酵母」
・アルコール度数  16度
・容器容量     1.8L   720ml

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